最近、エンジンのかかりが悪い、走行中にパワーダウンが起こる、燃費が悪いなどの症状に悩まされていませんか?
これらの問題は国産車、輸入車を問わず、さまざまな車種で発生します。そして、これら問題の一つの原因が、イグニッションコイルの故障です。
「イグニッションコイル?」と疑問に思うかもしれませんが、イグニッションコイルは、エンジンをスムーズに動作させる重要なパーツです。
バッテリーの低い電圧を高い電圧に変換して、エンジンを点火させる役割があります。このコイルが壊れると、エンジンの性能が大幅に低下します。
では、イグニッションコイルはなぜ壊れるのでしょうか?また、壊れる前兆はあるのでしょうか?そして、イグニッションコイルが壊れたら、どう対処すれば良いのでしょうか。
この記事では、これらの疑問に答えるために、イグニッションコイルが壊れる理由、故障の前兆、そして対処法について詳しく解説します。
車に詳しくない方でもわかりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
イグニッションコイルとは?
ガソリンエンジンは燃料を燃焼させるのに着火が必要です。そのための点火装置をイグニッションシステムと呼びます。
点火はスパークプラグが火花を飛ばすことで発生しますが、それには高い電圧が必要です。
イグニッションコイルは、一般的な車のバッテリーの電圧12ボルトを高めて、スパークプラグに送るための装置です。
イグニッションコイルを使うことで、電圧は約1万ボルトにできます。
イグニッションコイルの重要性
イグニッションコイルは、エンジンの始動と燃料の燃焼に欠かせない装置です。
イグニッションコイルが壊れると、スパークプラグが点火できず、結果としてエンジンが始動しなかったり、燃料の燃焼が不安定になったりします。
これにより、パワーロスや燃費の悪化などの問題を引き起こす可能性があります。
イグニッションコイルの仕組み
イグニッションコイルは、1次コイル(プライマリコイル)と2次コイル(セカンダリコイル)の2つのコイルで構成されています。
1次コイルは、バッテリーから供給される低電圧(通常12ボルト)を受け取ります。このコイルは粗いワイヤーで作られていて、数十から数百回巻かれています。
2次コイルは、非常に細いワイヤーで作られていて、数千から数万回巻かれています。
この1次コイルと2次コイルの巻き数の差により、電磁誘導の原理によって磁場の変化が起きて、非常に高い電圧(通常数万ボルト)を作り出すことができます。
イグニッションコイルの種類と特徴
イグニッションコイルは、主に3つの種類があります。
分離型イグニッションコイル、一体型イグニッションコイル、ダイレクトイグニションコイルです。
分離型イグニッションコイル
エンジンの外側に設置され、高圧電線を通して各気筒のスパークプラグに電流を送る方式です。古いエンジンや低出力エンジンによく見られます。
分離型イグニッションコイルの利点は、交換が容易で費用が低いことですが、長い高圧電線による電流のロスがあるため、点火性能が低下する可能性があります。
一体型イグニッションコイル
エンジンの上部に設置され、短い高圧電線を通して各気筒のスパークプラグに電流を送る方式です。中出力エンジンや高性能エンジンで使用されます。
一体型イグニッションコイルの利点は、高圧電線が短いため電流のロスが少なく、点火性能が向上することです。しかし、交換がやや困難で費用が高いというデメリットがあります。
ダイレクトイグニッションコイル
各気筒のスパークプラグの上に直接取り付けられたイグニッションコイルで、高圧電線を必要としません。最新のエンジンや高出力エンジンで主に使用されます。
ダイレクトイグニッションコイルの利点は、高圧電線が不要であるため電流のロスがほとんどなく、点火性能が最も高いことです。
一方で、交換が非常に困難で費用が非常に高いというデメリットがあります。高級車やスポーツカーに採用されていますが、最近では一般車にも採用されるようになってきました。
イグニッションコイルが壊れる理由
イグニッションコイルはエンジンを動かす重要な部品であり、その故障は稀ですが、いくつかの原因で壊れることがあります。
ここでは、その主な故障の原因を解説します。
経年劣化
最も一般的な故障の原因は経年劣化です。
イグニッションコイルのコイル線は長時間使用すると劣化し、絶縁体が損傷したり、断線することがあります。
高温や湿気による劣化
エンジンルーム内の高温や湿度がコイルの劣化を早めます。
特に湿度の高い環境では、コイル内部の絶縁体が劣化して、エンジンの性能が低下します。
電圧不足や過電流による焼き付き
イグニッションコイルは、電気を使って高圧電流を作ります。しかし、電気の量が不安定だと、イグニッションコイルに負担がかかります。
例えば、バッテリーが弱っていたり、オルタネーター(エンジンオイルを燃焼室に送り込む装置)が故障していると電圧不足になります。逆に、バッテリーが過充電されたり、配線がショートすると過電流になります。
電圧不足や過電流が続くと、イグニッションコイル内部が熱くなって焼き付いてしまいます。焼き付くと、高圧電流を作れなくなります。
水濡れ
水濡れはイグニッションコイルにとって最大の敵で、内部のコイルや端子に錆や腐食を引き起こします。
これは洗車や雨、さらには冬の凍結解けの水などから起こる可能性があります。
振動
走行中のエンジンや道路からの振動が強いと、イグニッションコイルにも影響を及ぼし、その結果、絶縁体が割れたり、内部のワイヤが断線することがあります。
スパークプラグの故障や交換時期の過ぎ
スパークプラグは、イグニッションコイルから送られた高圧電流を火花に変えて、燃料と空気の混合気に点火する部品です。
スパークプラグが正常に働かないと、イグニッションコイルからの電圧が適切に放出されず、その結果、コイルに過大な電流が流れ、故障することがあります。
乗り方による影響
エンジンを高回転させたり、急発進や急停止を繰り返すと、イグニッションコイルにダメージが生じます。
また、長時間のアイドリングや短距離走行が多い場合、エンジン内部に水分やカーボンが溜まり、これがイグニッションコイルに悪影響を及ぼすことがあります。
使用環境や車種による差
イグニッションコイルの壊れやすさは使用環境や車種によっても変わります。
寒冷地ではエンジンの始動時の電流低下が懸念され、ターボエンジンや直噴エンジンなどの高性能エンジンでは、コイルにかかる負荷が高くなります。
以上、イグニッションコイルが壊れる主な原因を紹介しました。
イグニッションコイルが故障した場合は、エンジンが正常に動かなくなるため、早急な修理、交換が必要です。
イグニッションコイルの故障とその前兆
イグニッションコイルが壊れると、車には様々な影響が出ます。それらは前兆として表れることがあります。
ここではイグニッションコイルが壊れる前の症状を紹介します。
エンジン警告灯が点灯する
エンジン警告灯は、エンジンや排気系などに異常があると点灯するランプです。
車種や製造国により異なりますが、一般的にダッシュボード上にあって「CHECK ENGINE」やエンジン形状のマークで表示されます。
イグニッションコイルが故障すると、ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)が異常を検知して、警告灯を点灯させます。
エンジンがかかりにくくなる
イグニッションコイルが故障すると、エンジンの始動時にスパークプラグに十分な電気が届かず、火花が飛ばないことがあります。
これにより、燃料と空気の混合気が燃焼しないため、エンジンがかかりにくくなります。
また、走行中にも同様の現象が起こり、エンジンの回転数が不安定になったり、パワーダウンや失速したりすることがあります。
アイドリングが不安定になる
アイドリングは、エンジンをかけたまま停車している状態です。エンジンは一定の回転数で回っていますが、イグニッションコイルが故障すると、点火プラグが不規則に点火します。
このため、エンジンの回転数が上下したり、止まったり、安定しなくなります。
アクセルを踏み込んでも加速しにくい
イグニッションコイルが正常に機能しないと、アクセルを踏んでも想定通りに加速しないことがあります。
スパークプラグが適切に点火できず、燃料の燃焼が十分に行われないためです。結果的にエンジンのパワーが低下します。
特に高速走行時や登坂時に加速力の低下を感じやすくなります。
エンジンの始動が遅い
イグニッションコイルからの電流供給が不足すると、エンジンの始動が遅くなります。
すぐにエンジンが始動しない、または始動したもののすぐに停止するといった現象が起こることがあります。
排気ガスが黒い
イグニッションコイルが壊れると、エンジンの燃焼室に十分な火花が飛ばされなくなり、黒い排気ガスが発生することがあります。
これは、燃料が完全に燃焼されず、未燃焼の燃料が排気ガスに混ざるためです。
燃費の悪化
燃費の悪化もイグニッションコイルの故障の前兆です。イグニッションコイルが故障すると、燃料の燃焼効率が悪くなり、燃費が悪化することがあります。
ガソリンの減りが早いと感じたら、イグニッションコイルが壊れている可能性があります。
これらのいずれかの症状が現れた場合は、専門家に診てもらい、問題の早期解決が推奨されます。
特にエンジン警告灯が点灯した場合、最も早いタイミングで車を整備工場に持ち込み、診断を受けることが重要です。
イグニッションコイルが壊れても走行できる?
イグニッションコイルが完全に故障した場合、エンジンは始動しなくなるか、または始動した直後に停止する可能性があります。
これは、エンジンが燃料を燃焼させるために、必要な電気火花が生成できないためです。
しかし、一部が正常に機能している場合、イグニッションコイルが部分的に故障している場合は、車を動かすことができます。
しかし、その状況は非常に不安定で、エンジンの振動、パワーロス、異音、始動困難などの問題が起こるリスクがあります。
さらに、燃料が完全に燃焼しないことにより、燃費が悪化し、排気ガスが黒くなるなど、環境に悪影響を及ぼす可能性もあります。
このため、上記のような車の違和感を感じたら、すぐに専門の整備工場で診断を受けることを強くおすすめします。
イグニッションコイルが故障したときの対処法
イグニッションコイルが故障したときの対処法は基本的に2つです。それは、自分での交換と、プロによる修理または交換です。
以下では、それぞれの対処法とその特徴、手順を紹介します。
自分でイグニッションコイルを交換する
イグニッションコイルは自分で交換可能な部品です。しかし、エンジンルーム内に設置されているため、交換の難易度は高いです。
また、交換作業を始める前には、バッテリーから電源を切る必要があります。交換手順は以下の通りです。
- エンジンを冷やす。
- バッテリーのマイナス端子を外す。
- エンジンルーム内の古いイグニッションコイルを取り外す。
- 新しいイグニッションコイルの取り付け。
- バッテリーのマイナス端子を接続する。
詳しくは車の取扱説明書を参照してください。
ただし、手順を誤るとエンジンに大きなダメージを与える可能性があるため、不安がある場合は購入したディーラーや専門の整備工場への依頼をおすすめします。
専門の整備工場に依頼する
イグニッションコイルが壊れる原因は様々な要素があり、適切な処置は専門的な知識と技術を要します。
そのため、専門の整備工場に依頼するのが最善策です。整備工場では、高度な診断機を使用して的確な点検を行い、適切な処置を施します。
整備工場に依頼するメリットは次のとおりです。
- 他のエンジン部品の故障も診断でき、全体的なエンジンの健康状態を把握する。
- イグニッションコイルの修理や交換を依頼できる。
- イグニッションコイルの故障原因を特定できる。
また、問題がイグニッションコイルに関連していない場合でも、適切な対策を講じることができます。
愛車の不調を感じた際は、専門的な技術を持つ整備工場での診断が効果的です。
特に外車であれば対応できる整備工場は限られています。外車の修理を依頼するなら、外車専門の整備工場が良いでしょう。
イグニッションコイルの交換費用
イグニッションコイルの交換費用は、車のメーカー、モデル、イグニッションコイルの種類により変動します。
一般的には、イグニッションコイルの交換費用は1本あたり約1万円から2万円です。
仮に車に4本のイグニッションコイルが使用されている場合、合計で約4万円から8万円ほどが予想されます。
ただし、イグニッションコイルの取り付け位置が複雑な車種や高級車の場合には、工賃が増える可能性もあります。作業を依頼する前には必ず見積もりを依頼して費用を確認してください。
イグニッションコイルが故障する前のメンテナンス
イグニッションコイルが故障すると、エンジンの動作に大きな影響を及ぼします。
しかし、適切な運転習慣と定期的なメンテナンスで、故障のリスクを軽減できます。
適切な乗り方の実践
イグニッションコイルの寿命を延ばすためには、適切な運転習慣も大切です。
急な加速や減速はエンジンに負担をかけ、イグニッションコイルにも影響を及ぼします。また、適切なアイドリング時間を守ることも重要です。アイドリングが長いと、エンジンが冷えてしまい、イグニッションコイルに過大な電流が流れることがあります。
これらを避け、スムーズな運転を心掛けることで、イグニッションコイルの寿命を延ばすことができます。
定期的な点検
イグニッションコイルの故障を防ぐためには、定期的な点検を行うことが大切です。点検は次のようなものです。
- エンジンオイルの量と状態の確認
- スパークプラグの状態の確認
- バッテリーの状態の確認
- エンジンの冷却水の量と状態の確認
- エンジンの状態の確認
これらの点検を定期的に行うことで、イグニッションコイルの故障を未然に防ぐことができます。
まとめ:イグニッションコイルが壊れる前の定期点検が大切
本記事では、イグニッションコイルの重要性や故障時の対処法、さらに故障予防のためのメンテナンスを紹介しました。
イグニッションコイルの故障は、エンジンの動作に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ですが、適切な運転習慣を実践し、定期的なメンテナンスを行うことで、これらの問題を回避できます。
ご自身でのメンテナンスに不安を感じる方や、専門家の意見を聞いてみたいと考えている方は、地元の信頼できる自動車整備工場に相談してみてください。
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